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設立趣意書

財団法人日本分析センター設立趣意書

物質の化学的組成を識別する分析は、化学、物理学をはじめとする諸科学の基礎となるものであるばかりでなく、産業の発展や科学技術の進歩を支える重要な役割を果たすものであることは、改めて贅言を要しない。

特に近年、国民の間に環境や安全の問題に対する認識が高まるにつれて、対象となるものの実態を定性的、定量的に把握する分析デ-タ-についての要求あるいは関心は、ますます強まってきている。

現在及び将来のエネルギ-問題解決の最も有力な担い手である原子力の開発、利用を例にとっても、これの推進にあたっては、原子力発電所などの原子力施設周辺の環境試料中のバックグランド放射能水準の正確な評価や施設稼動に伴う放射能水準の推移の追跡などを行うことが必要と考えられる。

また、原子力軍艦の寄港に伴う周辺環境物質の正確な放射能調査、あるいは放射性降下物による放射能水準把握のための分析も国民にとって極めて重大な関心事となっている。

さらに、環境問題の解決にも、まず問題となる汚染物質についての信頼できる分析値をつかむことが大切であることは、いうまでもない。

このように重要な分析も、我が国では、従来、その理論面及び分析技術の水準については著しい進歩がみられるものの、増大の一途をたどる需要に応え、高い水準の分析を責任をもって行うための分析体制の整備については、ややもすれば等閑視されてきた事実は否めない。

かかる最近の諸般の状勢により鑑みて、我々は一日も早く国民に信頼されるすぐれた分析機関が活動することにより、各方面の切実な要求に応え得るように努めることが焦眉の急務であると考える。

この意味から、このたび我々は信頼される分析専門機関として、財団法人日本分析センターの設立を提唱する次第である。

財団法人日本分析センターは、学問的技術的に優れた人材の確保とそのための高水準の処遇ならびに高性能の設備機器の完備に十分留意し、国及びその他からの依頼に応じ、環境物質の放射能分析をはじめとする各種の分析の実施を主たる業務として行い、併せてこれに欠かすことの出来ない分析法及び分析技術並びに分析機器等の研究・開発、分析技術者の養成・訓練、分析技術の指導・普及、内外の分析機関との連絡協調の促進等を行い、我が国の分析に関する中枢機関にふさわしい内容をもつ権威ある機関として育成したいと考える。

財団法人日本分析センターは、上述の趣旨に御賛同の各位の浄財を基金とし、国の強力な支援のもとに設立したいと考えているので、各位の暖かい御理解と御協力をお願いする次第である。

昭和49年4月