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ドーピングについてのQ&A
質問一覧
A.全般的なこと
B.検査に関すること
- Q-B01 ドーピング検査とはどういうものですか?
- Q-B02 競技会検査はどのように行われますか?
- Q-B03 競技会外検査はどのように行われますか?
- Q-B04 ドーピング検査には尿検査と血液検査があるそうですが、どのような違いがあるのですか?
- Q-B05 どうしてもドーピング検査を受けなくてはいけないのですか?
- Q-B06 検査結果が判明するまでにどれくらいかかりますか?
- Q-B07 まったくそのつもりがないまま知らずに摂取したり服用したりしたものに禁止物質が含まれ、それがたまたま検査で見つかっても「ドーピング」として制裁を受けることがあるのでしょうか?
- Q-B08 検査で禁止物質が検出された場合はどうなりますか?
- Q-B09 ドーピング検査で陽性となり、制裁が決定された場合、抗議することはできますか?
- Q-B10 ドーピング・コントロールとはどのような意味ですか?
C.食品や薬に含まれるドーピング物質のこと
D.治療のための薬物使用に関すること
E.その他
- Q-E01 2010年度の禁止表で、興奮薬としてプソイドエフェドリンが再導入されたそうですが、なぜでしょうか?
- Q-E02 禁止物質リストに掲載されていなければ、使用してもドーピング防止規則違反にはならないのでしょうか? また、このような物質に禁止物質と同じような作用のある場合、ドーピング検査で検出できるのでしょうか?
- Q-E03 もともと人体内に存在する成分を体外から摂取することもドーピング違反になりますか? また、このような物質が検出されても、そもそも体内に存在するのが当たり前なので、外部から摂取したと言えないのではないでしょうか?
- Q-E04 多量の水とともに利尿剤を服用すれば、尿中の成分が薄まるため検出されにくくなるのではないでしょうか?
- Q-E05 わからないときはどこに相談したらいいですか?
回答一覧
A.全般的なこと
Q-A01 ドーピングとは何ですか?
かつては、「薬物を使用して不正に競技能力を高めること」のようにドーピングを定義していましたが、不正行為の多様化のため、これだけでは正確な定義ができなくなりました。現在では、WADA規程により禁止物質及び禁止方法を列挙したリスト(禁止表)が定められ、以下の行為がドーピング防止規則違反とされています。
- 競技者の身体からの検体に禁止物質、その代謝物あるいはマーカーが存在すること。
- 禁止物質、禁止方法を使用する、または使用を企てること。
- 正式に通告された後で、正当な理由なく検体採取を拒否すること。
- 競技会外検査に関連した義務に違反すること。具体的には、居場所情報を提出しないことや連絡された検査に来ないこと。
- ドーピング・コントロールの一部に不当な改変を施すこと、または企てること。
- 禁止物質または禁止方法の使用手段を保有すること。
- 禁止物質・禁止方法の不正取引を実行すること。
- 競技者に対して禁止物質や禁止方法を投与・使用すること、または投与・使用を企てること、ドーピング防止規則違反を伴う形で支援、助長、援助、教唆、隠蔽などの共犯関係があること、またはこれらを企てる行為があること。
Q-A02 ドーピングはなぜ禁止されるのですか?
WADA規程では、その目的として「ドーピングのないスポーツに参加するという競技者の基本的権利を保護し、もって世界中の競技者の健康、公平及び平等を促進する。」と述べています。更に、その基本原理として「スポーツ精神を保護する」ことを挙げ、「ドーピングはスポーツ精神に根本的に反するものである。」と明言しています。このことから、ドーピングを禁止する理由は、(1) 競技者の健康を害する、(2) フェアプレーの精神に反する、(3) 反社会的行為である、の3点であると言えます。
Q-A03 ドーピング防止活動はどのように行われているのでしょうか?
1960年代後半から、オリンピックやいくつかの国際競技大会でドーピング検査が行われるようになり、その後、国際オリンピック委員会(IOC)が中心となってドーピング防止への取り組みが行われてきましたが、ドーピングの手口はエスカレートする一方でした。1999年2月にローザンヌで開かれた「スポーツにおけるドーピングに関する世界会議」で、ドーピング防止活動の中核を担う国際機関の設立が決まり、同年11月に世界ドーピング防止機構(WADA)が発足しました。WADAは、ドーピング防止活動に対する統一基準である「世界ドーピング防止規程」(WADA規程)や禁止物質・禁止表を定める「禁止表」の策定、スポーツ団体と公的機関の取り組みの調整、ドーピング防止に関する普及と教育等を行い、IOCをはじめ、政府間組織、各国政府、各国のドーピング防止機関、各種スポーツ団体等の協力の下に運営されます。
我が国のドーピング防止機関としては2001年に財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が設立され、国内ドーピング検査の標準的手順の作成、ドーピング・コントロール・オフィサー(DCO、検体採取の現場を管理する検査員)の認定、ドーピング・コントロールの実施、ドーピング防止教育、など国内のドーピング防止活動を統括して推進しています。 また、スポーツの訴訟を扱う国際機関としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)が、国内機関として日本スポーツ仲裁機構(JSAA)があります。
Q-A04 禁止物質・禁止方法を教えて下さい。
WADAは禁止物質と禁止方法を詳しく定めた禁止表を公開し、毎年改訂しています。禁止表は次の3つに分類されています。
- 常に禁止される物質と方法 (競技会時でも競技会外でも使用禁止 )
- 競技会時に禁止される物質と方法
- 特定競技において禁止される物質
JADAのホームページには、禁止表の原文(英語)と日本語訳が掲載されています。
なお、医学的に必須と認められた場合に限り、審査当局に申請すれば、「治療目的使用のための除外措置」(TUE)(Q-D02)が認められ、限定的に使用が許可されることがあります。
Q-A05 特定物質とはどういうものですか?
禁止表には、医薬品として広く市販されているため不注意でドーピング防止規則違反を起こし易い薬物、あるいはドーピング物質としては比較的濫用されることの少ない薬物も含まれており、これらを「特定物質」とすることができるとされています。特定物質を含むドーピング違反では、「この種の特定物質の使用が競技力向上を目的としたものではないことを競技者が証明できる場合」には、制裁処置が軽減されることがあります。禁止表の最初に、特定物質に指定されている物質が記されています。
Q-A06 監視プログラムとはどういうものですか?
禁止物質ではないが放置するとドーピングに使用される危険性がある物質について、世界ドーピング防止規程により監視プログラムが策定されています。2011年度には、カフェイン等の興奮薬、モルヒネ等の麻薬が監視プログラムに指定されています。
B.検査に関すること
Q-B01 ドーピング検査とはどういうものですか?
ドーピング検査には、「競技会検査」と「競技会外検査」があります。競技会検査は競技終了後に、通告がなされた選手(メダル獲得者、記録達成者、その他の無作為に抽出された選手)に対し競技場で行われます。競技会外検査は、事前通告なしに任意の場所で行われます。競技会検査では禁止表の「常に禁止される物質と方法」と「競技会検査で禁止される物質と方法」が対象ですが、競技会外検査では禁止表の「常に禁止される物質と方法」のみが対象となります。
競技会検査は、国際競技大会の場合は主催する国際スポーツ団体、日本で行われる国内競技大会では日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が主体となって行います。競技会外検査は、上記の国際スポーツ団体、JADA、WADAが主管することができます。
検査会場で採取された検体(尿または血液)は、A検体、B検体に二分して、分析機関に送られ、A検体の分析が行われます(B検体は保管)。我が国で検査が行われた場合は、A検体の分析結果は10営業日以内にJADAに通知されます。その結果が陰性の時はそれで検査終了です。陽性の時は本人にも通知され、立ち会い検査でB検体の分析が行われます。そしてB検体も陽性の時、日本ドーピング防止規律パネルで最終判断が下されることになります。このやり方は、競技会検査も競技会外検査も基本的に同じです。
Q-B02 競技会検査はどのように行われますか?
尿検査、血液検査で基本的流れは同じですので、尿検査の場合を説明します。
- 通告:検査対象者には、競技終了後に付添人(シャペロンとも呼ばれる)から通告があります。対象となるのは普通、メダル獲得者、記録達成者、その他の無作為に抽出された選手です。
- 出頭:通告されたら、決められた時間までにドーピング検査室に行かなければなりません。検査を拒否するとドーピング検査陽性と見なされる可能性があります。検査室には1人の付き添いが認められます(競技者が未成年の場合は付き添いが必須)。
- 採尿:採尿容器を選び、同性のドーピング・コントロール・オフィサー(DCO)の立ち会いのもとに採尿します。
- 分注・封印:検体容器を選び、尿をA・Bの2つの検体容器に分注し、封をします。
- pH及び比重の確認:採尿容器に残った尿で、pHと比重を確認します。
- 使用薬物の申告:少なくとも7日以内に使用した薬物およびサプリメント等を申告します。
- 署名:検査用紙の記載内容、手続きに問題がなかったかを確認して署名します。検査用紙の控えを受け取り保管しておきます。
検体の分析とその結果についてはQ-B01を見て下さい。
Q-B03 競技会外検査はどのように行われますか?
トレーニング期間中の不正を防ぐため、また競技者の潔白を証明するために、登録検査対象選手を対象として、予告なしに検査員がトレーニング中や合宿所などに出向いて実施されます。これを可能とするため、登録されている選手は、所属国のドーピング防止機構に居場所情報を通知しなければなりません。検査の手続きは、競技会検査(Q-B02)と基本的に同じです。
Q-B04 ドーピング検査には尿検査と血液検査があるそうですが、どのような違いがあるのですか?
以前は尿検査だけでしたが、2000年頃から血液検査も併用されるようになりました。血液検査ではすべての禁止物質を検出できるわけではありませんが、酸素供給能力を高めるような物質の検出には有効です。一般に、尿検査は検出の特異性が高い、血液検査はコスト安で処理能力が高いという特徴があります。そのため、大会前のスクリーニング、予備テストとして全員あるいは多数の競技者に対して血液検査を行い、競技後、メダル獲得者や記録達成者に対して尿検査を行うというやり方が採られます。
Q-B05 どうしてもドーピング検査を受けなくてはいけないのですか?
ドーピング検査を通告されたら、拒否したり延期を申し入れたりすることはできません。拒否したり、指定の時刻に検査場に出頭しなかったりすること自体が「ドーピング防止規則違反」です。
Q-B06 検査結果が判明するまでにどれくらいかかりますか?
検査で採取された尿や血液の検体は、直ちに分析機関に送られて分析されます。日本国内で行われるドーピング検査では、検体が試験所に到着してから10営業日以内に、A検体の分析結果が検査実施機関とJADAに通知されます。これが陰性の場合はそれで検査終了です。A検体より禁止物質が検出され、ドーピング防止規則違反が疑われる場合には、競技者本人に検査結果とその後の手続きについて通知が行われます。
Q-B07 まったくそのつもりがないまま知らずに摂取したり服用したりしたものに禁止物質が含まれ、それがたまたま検査で見つかっても「ドーピング」として制裁を受けることがあるのでしょうか?
ドーピング検査では、動機ではなく結果が問題になります。どのような理由であれ、禁止物質が検出されれば「陽性」であり、ドーピング違反が問われます。これを「厳格責任の原則」と言います。禁止物質が入っているのを知らないで風邪薬や胃腸薬をのんだ場合も、違反であることは免れません。従って、日常生活に十分注意する必要があります。
ただし、自己に過誤又は重大な過誤が存在しなかったこと、又は、特定の状況が存在し競技者の競技力の向上が目的ではなかったことを競技者本人が証明できる場合、制裁措置が取り消され、又は短縮される可能性があります。
Q-B08 検査で禁止物質が検出された場合はどうなりますか?
A検体の分析結果が陽性(禁止物質が検出されること)であっても、すぐにドーピング防止規則違反になるわけではありません。TUE(治療目的使用のための除外措置;Q-D02)を申請して認められている場合もあるからです。
TUE申請がなく検査手続きに問題がない場合、競技者本人が要求すればB検体の確認分析が行われます。B検体の分析結果が陰性の場合は制裁措置等はありません。競技者がB検体分析を要求しなかった場合、またはB検体分析結果も陽性であった場合には、日本ドーピング防止規律パネルによる聴聞会が開催されます。聴聞会では、競技者に弁明の機会が与えられます。そこで競技者本人が認めればドーピング防止規則違反となり、日本ドーピング防止規律パネルの審査によって、制裁措置(成績・記録の抹消、資格停止など)が決定されます。また、競技者以外の違反に関与した者にも制裁が課されることがあります。
Q-B09 ドーピング検査で陽性となり、制裁が決定された場合、抗議することはできますか?
制裁措置を受けた当人あるいはその関係者は、スポーツ仲裁裁判所(CAS)または日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に「不服申し立て」を行うことができます。不服申し立ては、日本ドーピング防止規律パネルによる制裁措置決定から14日以内になされなければなりません。国際競技大会での事件や国際水準の競技者が関与した事件についてはCASに、それ以外はJSAAに不服申し立てを行います。
Q-B10 ドーピング・コントロールとはどのような意味ですか?
ドーピング検査の最初から終了までの全ての段階及び過程をいいます。この間には次の過程が含まれます。
- 検査配分計画の立案(検査対象者登録リストの作成を含む)
- 検査対象者登録リストに登録された競技者による居場所情報の提供
- 検査会場での検体の採取及び取扱い
- 分析機関における検体の分析
- 申請されたTUEの認否の審査
- 分析結果の管理並びに聴聞会
- 不服申立ての最終的な解決
C.食品や薬に含まれるドーピング物質のこと
Q-C01 市販の薬を飲んでもドーピングになることはありますか?
市販の薬に禁止物質が含まれていることがありますので、使用する際は必ず成分を確認し、ドーピングに詳しい医師や所属競技団体に相談して下さい。例として次のようなものがあります。
・エフェドリン(興奮薬):市販の総合感冒薬のほとんど、葛根湯等麻黄を含む一部の漢方薬
・ストリキニーネ(興奮薬):一部の市販胃腸薬
・メチル-1-テストステロン(蛋白同化薬):一部の強精剤
・デヒドロエピアンデロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(内因性蛋白同化薬):海外で市販されている栄養補助食品
・コルチゾール(糖質コルチコイド):一部の抗炎症薬
なお、禁止表は毎年改訂されるので、これまで禁止されていなかった薬物が禁止物質になることがあります。注意して下さい。
Q-C02 食事、飲み物、お酒などでドーピングになることはありますか?
通常の食事に禁止物質が含まれることはまずありません。アルコール(エタノール)はアーチェリー、空手など一部の競技では競技会時に限り禁止物質になっています。 お茶やコーヒーに含まれるカフェインは、2004年以降禁止物質からはずれました。しかし、監視プログラムに指定されていますので、その結果によって再び禁止される可能性もあります。しかし、日常的なお茶やコーヒーの摂取で問題になることはありません。
Q-C03 来月に競技大会に出場しますが、風邪をひいてしまいました。医師から処方された風邪薬を服用しても問題ないでしょうか?
禁止物質でない薬がありますから、医師に競技大会出場のことを話し、症状に応じて適切な処方を受けて下さい。また、市販の総合感冒薬にはほとんどエフェドリン等の興奮薬が含まれていますので、服用時期等について、ドーピングに詳しいスポーツドクター等に相談することをお勧めします。
Q-C04 栄養補助食品(サプリメント)でドーピングになるということはありますか?
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)では、食品・製薬メーカー等の要請により審査を行い、禁止表に抵触しないとした食品、サプリメントを認定しています。これらをJADA認定商品といい、ラベルにJADA認定商品マークを付けることができます。これに含まれるサプリメントは安心して使用できます。JADAのホームページには認定商品のリストが掲載されています。
これ以外のサプリメントの使用には注意して下さい。海外のサプリメントには禁止物質を含むものが多いと言われます。特に、成分表示がないものは使用しないでください。また、滋養強壮剤(精力剤)にも禁止物質が含まれている場合がかなりあります。
Q-C05 ある製薬会社で製造しているある薬に禁止物質が含まれているかどうか、調べる方法があるでしょうか?
当機関ではこの質問に直接お答えすることはできませんが、本ホームページのリンク集「ドーピング禁止物質を調べるための資料やデータベース」に掲載している資料が参考になります。しかし、慎重を期す場合は、ドーピングに詳しいスポーツドクターに相談されるか、JADAに問い合わせられることをお勧めします。
D.治療のための薬物使用に関すること
Q-D01 治療のために医師から薬を処方されています。どんな点に注意すればよいでしょうか?
医師から処方される治療薬にも禁止物質があります。まずは禁止物質以外の薬で治療できないか、主治医と相談して下さい。その場合でも薬物名を記録しておいて下さい。一般の医師で判断に迷う場合は、ドーピングに詳しいスポーツドクターにチェックしてもらうか、JADAへ直接お問い合わせ下さい。治療のために禁止物質がどうしても必要で代替措置が考えられない場合には、「治療目的使用のための除外措置」(TUE)(Q-D02)を申請し、認められれば使用できます。
禁止物質となっている治療薬の具体例には、(1)喘息の内服薬・吸入薬(ベータ2作用薬など)、(2)痛風でのプロベネシド(尿酸排泄剤)、(3)高血圧のベータ遮断剤・利尿剤、(4)糖尿病のインスリン、等があります。
Q-D02 治療のため、禁止物質・方法を使用する必要がある場合はどうすればよいですか?
医療上の理由でどうしても禁止物質・禁止方法を使用しなければならない場合、事前に「治療目的使用のための除外措置」(TUE)の申請手続きを行い、許可されれば使用することができます。申請が承認されるためには、治療上必要であり、代替の治療法がなく、使用しても競技力を高めないことが必要です。申請には所定の「TUE申請書」、「確認書」に詳細な医療記録や検査所見などを添え、JADAに提出します。
従来の略式TUEは廃止され、その対象であった吸入ベータ2作用薬のうちサルブタモール(最大1日用量1600マイクログラム)、サルメテロールは2010年度から禁止物質ではなくなりました。2010年度にはドーピング検査時に使用の申告が必要でしたが、2011年度禁止表ではその規定もなくなっています。その他の吸入ベータ2作用薬は通常のTUE申請が必要です。申請の際の医療情報として、「JADA吸入ベータ2作用薬使用に関する情報提供書」を提出します。
略式TUEのもう一つの対象であった糖質コルチコイドの非全身的使用についても、2010年度に禁止物質から外れ、2011年度にはドーピング検査時の使用申告も不要になりました。
Q-D03 TUE申請書に署名する医師は、当該の競技者が属する競技連盟やチームの医師でなければならないのでしょうか?
TUEの申請は、医師であれば誰でも構いません。競技者のかかりつけの医師から申請してもらっても結構です。
Q-D04 ぜん息治療のためのベータ2作用薬吸入のTUEが不要になったというのは本当ですか?
サルブタモール(最大1日用量1600マイクログラム)とサルメテロールの2種の吸入ベータ2作用薬については、2010年度に禁止物質から外れ、TUEの申請が不要になりました。2010年度禁止表ではドーピング検査時には使用の申告が必要とされていましたが、2011年度禁止表ではそれもなくなり、「メーカーの勧告する処方に従って吸入」するよう指示されています。それ以外のベータ2作用薬(メプチンなど)は、これまで同様TUEの申請が必要ですので注意してください。
Q-D05 糖質コルチコイドの使用上の注意について教えてください。
経口、静脈内、筋肉内、経直腸の競技会時の使用は禁止されています。関節内、関節周囲、腱周囲、硬膜外、皮内、及び吸入による使用については、ドーピング検査時に使用の申告が必要でしたが、2011年度禁止表ではその記述がなくなりました。但し、閾値レベルについての検討が継続されており、今後変更の可能性があります。耳、口腔内、皮膚、歯肉、鼻、眼、肛門周囲の疾患治療のための局所的使用は以前から許されています。
E.その他
Q-E01 2010年度の禁止表で、興奮薬としてプソイドエフェドリンが再導入されたそうですが、なぜでしょうか?
プソイドエフェドリンは、2003年まで競技会時の禁止物質でしたが、2004年度の禁止表からは外され、監視プログラムにより監視されていました。過去5年にわたる監視の結果から、検体からのプソイドエフェドリンの検出は上昇し続けており、多くの地域と競技における濫用が見られます。また、一定濃度以上のプソイドエフェドリンが運動能力向上効果を示す科学的事実が、文献に報告されています。これらの結果から、WADAは2010年度から再びこの物質を競技会時の禁止物質とし、尿中に150μg/mLを超える場合禁止されるとしました。
Q-E02 禁止物質リストに掲載されていなければ、使用してもドーピング防止規則違反にはならないのでしょうか? また、このような物質に禁止物質と同じような作用のある場合、ドーピング検査で検出できるのでしょうか?
禁止表に示されている物質はあくまでも例示であり、ほとんどの場合、禁止物質のリストの後には「及び類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの」あるいは「これらに限定するものではない」と追記されています。従って、同等の薬理作用や類似の化学構造をもつ物質を使用することもドーピング防止規則違反です。
禁止表に明記されていなくても、疑問のある薬物等についてはドーピングに詳しい医師に相談して下さい。また、治療のためどうしても使用が必要な場合は、「治療目的使用のための除外措置」(TUE)(Q-D02)の申請をして下さい。
ドーピング検査の網をかいくぐろうとする新規の物質がいろいろ作られていますが、これらを検出する新しい分析技術も開発されており、禁止表に追加される物質も増えています。
2011年度の禁止表の先頭に、分類S0として「未承認物質」(Non-approved substances)が加えられました。これにより、どの国の規制当局からも治療目的のための使用が認められていないすべての薬物の使用が禁止されます。禁止表に明示されていなくても、販売が中止された薬品、未承認の治験薬、違法流通薬品などの使用の禁止を明文化しようという意図からと考えられます。
Q-E03 もともと人体内に存在する成分を体外から摂取することもドーピング違反になりますか? また、このような物質が検出されても、そもそも体内に存在するのが当たり前なので、外部から摂取したと言えないのではないでしょうか?
体内に存在するホルモン、細胞、遺伝子等を人為的に摂取することにより運動能力を高めることができるので、このような行為はドーピングとして禁止されています。禁止表にはたとえば、テストステロンのような男性ステロイドホルモン、成長ホルモンのようなペプチドホルモン、遺伝子断片、細胞などの使用が含まれ、自己や他人の血液の注入も禁止行為です。
体内に存在する物質を体外から摂取したとき、その検出が難しいのは事実ですが、同位体比質量分析、生物学的パスポートなど、新しい有効な検出手段が開発・実用化されています。
Q-E04 多量の水とともに利尿薬を服用すれば、尿中の成分が薄まるため検出されにくくなるのではないでしょうか?
利尿薬も禁止物質です。その他、尿を意図的に薄める行為も隠蔽行為として禁止されています。また、分析の精度が上がっていますので、利尿薬を使用して尿を希釈しても異常成分の検出は可能です。
なお、使用に閾値が定められている物質(サルブタモール、カチン、エフェドリンなど)を、利尿薬と一緒に治療のためやむを得ず服用する場合は、閾値設定物質と利尿薬の両方について「治療目的使用のための除外措置」(TUE)(Q-D02)を申請する必要があります。利尿薬しかTUE申請していないと、閾値未満の量が検出された場合でも違反が疑われることになります。
Q-E05 わからないときはどこに相談したらいいですか?
ドーピング・コントロールは競技連盟によって異なるところもありますので、まず、所属する競技連盟の医事委員会等に問い合わせて下さい。身近にドーピングに詳しいスポーツドクターがいれば、その医師に相談するのもよいでしょう。




